ウスサマ明王〜イキイア、イッオン、オクエェ!〜

どうも、芙蓉です。

今回は、吉岡 暁先生の短編集の「サンマイ崩れ」に収録されている「ウスサマ明王」という短編について書こうと思っております。

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この短編集は第13回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞してるそうです。

私はサンマイ崩れを読もうとして買ったらまさかのウスサマ明王が凄すぎて度肝を抜かれたんですね。なので読んでから結構経ってるんですが、今だにおすすめの小説を聞かれたらいの一番にこれあげるくらい好きなんです。

 

で!も!

 

ネットで探してもウスサマ明王について語ってる人はおらず…

じゃあ自分で語るもんねーっていうのが今回の記事の趣旨です笑

 

⭐︎ホラーでありアクションであり⭐︎

 

とにもかくにもこの話のすごいところは、ジャパニーズホラーでありアクションものであるところ。もう絶対実写化したらかっこいい!と言い切れる笑

 

まずユーマルと呼ばれる人間になり済ますことができる怪鳥がでてきます。それがすっごい強いです。その強さはコマンドー部隊が相手するほど強いです笑

その戦いの描写がすっごいんですよ、もう映画顔負け。多分作者の表現力の力がすごいんでしょうけど、読んでる時はもうアクション映画さながらのドキドキです。隊員同士のやりとりや、上官との衝突。ユーマルに翻弄される人々、同じ敵に向かって戦うもの同士の絆、命懸けの対決など手に汗握ります。

後個人的に好きな乗っ取られちゃうけど、最後まで自我を持ってなんとか争って敵をやっつけるってやつもあって、かっこよさに「くぅー」ってなっちゃいました笑

 

そんなユーマルも人間を蹂躙する怪鳥として十分ホラーなんですけど、なんでユーマルが生まれたか?というとそれは呪いです。

 

時は明治まで遡ります。会津の貧しい土地から裕福な親戚を頼りに出てきた家族の奥さんが呪いの主です。この奥さんはとても信心深い人で特にウスサマ明王を頼りにしていました。

頼りない旦那さんと愛する子供を持つ彼女は精一杯妻として母として頑張っていました。

家族は会津を捨てて出できたものの親戚の事業が潰れて目論見は外れてしまい途方に暮れます。

荒れた寺で宿をとらせてもらいますが、そこの悪い住職とその仲間とトラブルになり残酷な殺され方をします。

特に子供がかわいそうで見てらないんですけど、そんな殺され方をしたので奥さんは瀕死の自分に自ら火をつけて呪いをかけるんですね。

 

「汝ら、逃さぬ…」(にしやら、のがさぬ…)

 

もう末代まで呪ってやるからなっていう。鬼気迫るセリフですね。

そりゃ愛する家族をそんな目に合わされたらそうなりますわな。やはり女は怖いです。

 

犯人達もそんなおっそろしいものみたから一目散に逃げていく。

その犯人もなかなかの胸糞なんですけど、まぁ1番のクソやろうが農民の与兵衛なんですよ。ギャンブル狂いなやつなんですけど、俺は度胸があるんだぞ!って見せたいから最初はボコボコにするだけだったはずなのに殺しちゃうんですよね。

「おれはこんなことできんだぞ!みたか!」みたいな感じで。仲間もそこまで望んでないのに。読んだ時に「あぁ、こういう引っ込みがつかなくなる人いるよな」と妙に思いあたる感じがしました。

 

そんな与平衛は敷島というタバコが好きで「敷島おくれ」と仲間にもらいタバコするシーンがあります。

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ギャンブル狂だからお金ないのかな。そんな敷島ラブな与平衛ももちろん呪いにかかるわけです。

 

⭐︎呪われた与平衛の愛らしさ⭐︎

 

その呪いというのは「生き腐れ」。

生きながら腐るというよりは腐りながら生きるという感じの呪い。簡単に言うと死ねないんですね。

与平衛は明治生まれなのに現代まで生き腐れます。その姿はまるで

 

「サメに食い散らかされたマグロの死骸の様」

 

の様だと表現されていました。まぁ骨に身がついてる程度ってことですね。ていうか、明治から現代まで100年以上経ってるのに身って残るんだ!ってなんかよくわからないけどテンション上がったの覚えてます笑

骨とほんのちょっとの身にだけになってる与平衛はあるところに保護されていて人工声帯をつけられて保管されてるんですね。

顎と肩の骨をうまく使って、職員のとこまできて

 

「イキイア、イッオン、オクエェ!」

 

とお願いするんです笑

そして事件の関係者に蹴られて痛そうな仕草をするっていう笑

なんかすごく滑稽で。やったことはクソなんでけしてこの表現は正しくないかもなんですけど可愛いんですよね、なんか。

与平衛のアンチはここでスッキリするし、私もしたんですけどちょっとコミカルさもあって。

この作者はその緊張と緩和というか時折はいるコミカルさがいい味を出してます。

 

生き腐れてもタバコ欲しいんかいっていう。人間の欲望も現れてて好きな場面ですね。

 

 

⭐︎愁芳尼はどんぐりさんで⭐︎

 

そのコミカルさと女の強さを持ち合わせて物語を盛り上げるのが愁芳尼という盲目の尼さんです。目が見えない分霊能力を授かったおばあちゃんの尼さんなんですが、関西弁で緊張した場面でも和まさせてくれると思いきや、相手の素性を当て「さすが霊能力者!」と思わせるが実は相手の声や関係性で推理していたなんていう食わせ者でもあります。

そして、ここぞ!という強さはあるので呪いの主の奥さんとの対決もあるというキャラクター。女同士の話し合いというか女同士だからできることみたいな感じですね。母の立場や奥さんの立場がわかるからこそだと思います。

この愁芳尼ですが、私読んでるうちにどーしてもある女優さんにしか思えなくなってきたんです。

 

それがどんぐりさん。

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カメラを止めるな!」で初めて拝見したんですけど、関西弁とコミカルなキャラクターが印象に残ってどうしても愁芳尼とかぶってしまって笑

もし実写化されるなら是非どんぐりさんにオファーをして欲しいと思います笑

 

その他にも

・ユーマル殲滅に奮闘する部下思いの滝三佐 

・頭脳明晰ユーマルのせいで子供の運動会に行けないデータマン

・熱血不死身野郎!藤堂巡査部長

・殺される時ってそんなこと考える?な名もなき末代の婆さん

など魅力的なキャラクターがおります。

 

本当に面白いから語れる人がいるといいのにーと思う作品です。

 

ではまたー。